町角のバリアフリーの意識

7) ユニバーサルデザイン・ドアの紹介

右アルカディア・ディオーナ(自閉装置付)       中央アルカディア・フォールド (手動)         

 某社の倉庫と駐車場を利用してちょっとした展示会がありました。

 この会社は機械工具や金物を主に、リフォーム関係や手すりなども精力的に取り扱っている会社であります。今回、開き戸や引き戸とは違った新開発のドアが展示されると聞いたので、どのようなドアか見学に行って来ました。

 上・下写真では、簡易的に枠組みをしておりますので斜めからのアプローチは車椅子ではできませんでしたけれども、できるだけこのドアの性能を知りたいと係りの人に手伝ってもらい、ドアの使い易さを検証してみました。

 まず、住宅空間と生活行動の無駄をなくす目的で開発された「アルカディア」ドアについてですが、開き戸のように戸幅半径分の開閉面積を必要としない、引き戸のように引き込み側を必要としないしレールがないというのがこのドアの特長であります。そして、ドアの前に立って、身体をさほど動かさなくても手や腕の動きだけでドアを開けることができるというのが最大の長所のようです。

 同じドアー軌道をするものについて、以前病院やホテルにてスチール製のもので体験したことはあるのですが、上・下写真のように木製ドアは初めてであります。スチール製のドアは動かし始めに少し力を必要とし重いと感じるのですが、アルカディアは軽く引くだけなので力の弱い人に適していると思います。そして、脳血管障害で半身麻痺の方については、利き手で開けれるように取り付けを右又は左に変更して設置することが可能なようです。

 上写真のアルカディア「ディオーナ」と「フォールド」は1:2の折れ戸タイプで、「ディオーナ」の有効幅員は960mm、「フォールド」の有効幅員は1000mm、下写真の「シングル」は1枚戸で有効幅員は720mmですが、車椅子での有効幅員もとれる幅広のものもあるようです。

 健常者や脳血管障害による半身麻痺の方については、このドアのドアー軌道に慣れれば使い易いのではと思っております。

 車椅子利用者については、ドアノブを持って開け始めの時は車椅子をドアに近づけ、下写真のようにドアの半開時には、車椅子を後ろに移動させねばなりません。自走式車椅子で一人でこのドアの開閉をする場合は、車椅子操作に慣れていなければならないでしょう。

 そして、ドアー軌道と車椅子の軌道を考えた場合、廊下の幅員とドアの有効幅員との関係で、福祉住環境コーディネーターのテキストでは850mm(ドア有効幅員)×850mm(廊下有効幅員)又は800mm(ドア又は廊下)×900mm(廊下又はドア)以上の有効幅員をとることを推奨しておりますが、「シングル」を住宅内で設置する場合は、廊下側は推奨の数値よりもやや広めの方が良いのではとsenninは想像しています。 

 アルカディア・シングル(手動)           アルカディア・シングルの上辺 

 最近の傾向として、バリアフリーとかユニバーサル・デザインなどと言われ出してから、今まで施設などで多く使用されていた物が各社の競合により価格を下げて広く一般住宅においても設置できるようになりました。

 上写真のアルカディア「ディオーナ」と「フォールド」は施設などに、アルカディア「シングル」は一般住宅に向いているものと思われますが、勿論住宅内で幅広い間口がとれるならば、有効幅員が幅広くとれる「ディオーナ」や「フォールド」がいいでしょう。そして、既存の間口で機能性と有効幅員を考えるならば「シングル」を取り付けてみたいと思ったりします。

 特別な施設で見かけていたドアが、より使い易く工夫されて一般家庭でも使用可能になったことは大変喜ばしいことであります。

 最後に、開き戸や引き戸だけでなく上写真のようなドアもあることを紹介しましたが、それぞれのドアの特長や長所・短所を考え合わせて、高齢者や障害を持っておられる方の身体状況に合ったドアを選択することが何よりと思っております。 

※このページでは、新しいドアの形を紹介するのみで、販売目的ではありませんのでそれに類する問い合わせについてはお答え致しておりません。 

平成13年10月 

日本における住環境の現状 / 福祉住環境コーディネーター / 住環境の整備について

介護保険制度と住生活との関係 / 町角のバリアフリーの意識 / 住環境についての質問コーナー