町角のバリアフリーの意識

16)興陽高校のバリアフリー庭園

 平成15年10月8日(水)の山陽新聞に「バリアフリー庭園」に関する記事が掲載されていました。高齢者・子供・障がい者を含む多くの方が楽しめるようなバリアフリー庭園を、興陽高校の敷地内に造園中とのことです。

 このバリアフリー庭園は、興陽高校「造園デザイン科」三年生38人(中野功先生、田中賢造先生)が主体となり、山陽学園短期大学「キャリアデザイン学科」の学生9人(澁谷俊彦教授)、藤田中学の三年生6人(渡辺武仁先生)が学校の枠を超えて実際にバリアフリー庭園づくりに参加し、バリアフリー(庭園)について学ぶという授業のようです。

 このように中学・高校・大学が学校の枠を超えて連携した授業を試みるというのは大変珍しいということですが、ことバリアフリーに関しては学校や年齢を問わないで学ぶ機会を学生達に提供するという試みは大変喜ばしいことだと感じております。

 車椅子利用者の一人として、このバリアフリー庭園について興味がありましたので興陽高校を訪問してきました。今年で三つ目のバリアフリー庭園ということです。中野先生の許可を得て写真撮影をさせていただいたのですが、今年は下記の「四季を彩る庭」を造園中とのことでした。

 個人の庭園ではなくパブリックの公園をイメージして作庭しているとのことですが、一区画の面積が約150uということですので、庭園内のスロープの勾配や通路幅をパブリックの公園と同じにできないのは言うまでもありませんが、車いすが走行し易いように通路幅を考えインターロッキング(舗装用のブロックで、水はけが良く色の組み合わせができる)にしたり車いすが脱輪しないように車止めなどを設置していて、それぞれに特徴のある庭園を拝見することができました。

 興陽高校ではこのバリアフリー庭園に多くの方々が接することを望んでいますので、気軽に皆さんも立ち寄って庭園内を散歩してみてはいかがでしょうか。

※バリアフリー庭園とは関係ないですが、興陽高校の生徒さん達は毎年秋頃「岡山高島屋」一階フロアのエスカレータ付近に庭園をつくって展示しているようです。
 今年の展示期間:10月15日(水)〜28日(火)
  題  : 「ちっちゃい夢みぃーつけた!」
 製作 : 岡山県立興陽高等学校 造園デザイン科3年生 38名

私の感想 : 色鮮やかな花と緑豊かな森のなか、滝の前で動物達が戯れているというなんともメルヘンチックな作品であると感じました。

岡山県立興陽高等学校
 住 所 : 岡山県岡山市藤田1500
 電 話 : 086-296-2268(代表)
 URL  : http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/

 造園デザイン科 庭園施工管理類型 38名

山陽学園大学・山陽学園短期大学
 住 所 : 岡山市平井1−14−1
 電 話 : 086-272-6254(代表)
 FAX  : 086-273-3226
 URL  : http://www.sguc.ac.jp/

 

「四季を彩る庭」 

3A、全景 3B、花時計と石垣 3C、架け橋

 設計担当代表者:藤島直之(造園デザイン科三年生)
 施工担当代表者:大賀勇気(造園デザイン科三年生)他造園デザイン科三年生 36名(平成15年度)

 概要と感想

 左上写真3Aは庭園の概観でありますが、この庭園のテーマは二つあって、一つ目は右上写真3Cの「架け橋」で、二つ目は中央上写真3Bの「花時計」であると思われます。勿論バリアフリーの庭園というのが前提でありますが、この二つのテーマはそれぞれにうまく融合し機能を果たそうとしています。

 今の時点ではこの庭園が未完成であり、花時計のなかの花をこれから植栽しようとしていますので、まだまだ造園中の状態であります。この庭園では花時計のなかの花を除いて、70〜80種の花木を庭園のなかに植栽する予定にしていると中野先生からお聞きしています。

 一年中何かの花が咲いているような四季を彩る庭にしたいということです。完成した庭園を早く観たいものです。

 「架け橋」のモニュメントは、中学・高校・大学の学校を超えた連携授業の証にこの「架け橋」を思いついたとのことですが、学校や年齢に関係なくバリアフリーについて皆で学ぶ授業は素晴らしい試みだと思いますし、車いすを利用している私としては嬉しい限りであります。

 この授業において、中学・大学の生徒さん達は実際に植木のせん定や竹垣づくり(男結びという紐の結び方)や石積み作業などを体験したということです。

 右上写真3Cのように、小さい子供さん達がこの「架け橋」に上がって、花時計を観られるように設計されているということですが、子供が大人の目の高さで花時計を観られるようにという配慮からだそうです。ハード面だけでなくソフト面(精神面での気遣い)でのバリアフリーの考え方というのは嬉しいことであります。

 花時計については、花の生態によって、一日のうちで花が咲く時間帯をそのまま花時計にしたいとのことです。つまり花の生態を利用して花時計(花の日時計)をつくりたいということらしい。私が訪問した時には、花時計のなかに花は植えられておらず、これから種を撒いていくとのことでした。この花時計が完成するまでには少し長い目で見守らなければならないようですが、その分楽しみも大きいように思われます。数ヵ月後が楽しみですね。

 中央上写真3Bのように庭園内の通路をインターロッキングにし、花時計の周りは車いすで走行し易いように幅約110cmの通路になっていました。子供から高齢者そして障がい者にとっても楽しめる、まさにバリアフリーの庭園であると感じています。

「実のなる庭の実のなる木」

(庭につかえる、食べられる木々) 

2A、全景 2B、スロープ 2C、「山野草園」から撮影

造園デザイン科三年生(平成14年度) 

名前:アオギリ・アケビ・アメリカザイフリボク・アンズ・イヌビワ・ウグイスカグラ・ウラジロノキ・オリーブ

   :カキ・カジノキ・カリン・キイチゴ・クコ・ケンポナシ・コウゾ 

   :ザクロ・シュガープルーン・スイカズラ・チャ・トチノキ・トチュウ・ナツグミ・ナツハゼ・ナツメ・ハシバミ・ピラカンサ・ビワ・ブルーベリー 

   :マテバシイ・マルメロ・ムベ・ヤマモモ・ラズベリ・リンゴ

 概要と感想 

 「実のなる庭の実のなる木」の作品は、中央上写真2Bのスロープのインターロッキングにありますように2002年の造園デザイン科三年の作品であります。

 左上写真2Aは「実のなる庭の実のなる木」の庭園の全景であります。インターロッキングのスペースが広いように感じられますが、このスペースに上記の30種類以上の実のなる木が植えられているのですから驚いてしまいます。ほとんどの木々の花期及び果期は4月頃から11月頃までなので、12月に見学した時には少々寂しい感じがしました。来年またいい時期を見計らって再度訪問したいと思っています。

 この庭園の特徴は「実のなる木々」と「ゆったりとしたおおらかなスペース」であると感じております。通路や広場にゆったりしたスペースがあると車いすの方向転換がし易かったり、スロープの勾配もゆるやで動き易いので開放感いっぱいの庭園であると印象付けられます。

 まさにパブリック公園向けのバリアフリー庭園と言えるのではないでしょうか。ほんとに実のなる季節が待ち遠しいですね。

「山野草園」 

1A、全景 1B、「実のなる庭・・・」から撮影 1C、紅葉

造園デザイン科三年生(平成13年度)  

稀少種:イブキトラノオ・エンコウソウ・オオハンゲ(赤花)・オニシモツケ・クリンソウ・フッキソウ 

絶滅危惧種:オキナグサ・クサフジ・チョウジソウ・ミズアオイ・ミズトラノオ 

危急種:サクラソウ・タコノアシ・ダイモンジソウ・フナバラソウ・ミツガシワ・ムサシアブミ 

 概要と感想 

 「山野草園」はバリアフリー庭園の一つ目の庭園のようです。左上写真1Aの概観からコンセプトは日本庭園とバリアフリーの融合でしょうか。入り口は竹製で京都の隠れ家の門を思わせる。
 純和風ならば、入り口から通路に飛び石や敷石が続くのでしょうが、テーマはバリアフリー庭園でありますから、カラフルなインターロッキングにしてあります。現代的なイメージを醸し出し、いかにも若者らしい斬新な発想の日本庭園のように感じます。

 インターロッキングのカラフルさはさほど嫌味なものに感じないのは、色の使い方が良いのか私の感覚が若いせいであろうか、いずれにしても車いす利用者にとっては通路を走行し易いのでありがたい。

 庭のなかに入って木や花に触れたり、話しかけられる距離に木や花があるというのは嬉しいことです。

 日本庭園と思わせるのは中央上写真1Bのように灯篭や行灯が配置してあるからだと思いますが、朱色の行灯は映画「千と千尋の神隠し」に出てくる「油や」の近くにあったものを模倣したものらしい。

 12月上旬の本日としては、なんとも中途半端な季節がらで花を鑑賞するという楽しみはなかったのですが、右上写真1Cのように角度によっては秋の紅葉を満喫できるようです。

 この庭園には約120種以上の花を植栽していますので、季節によってはもっと見栄えがして良かったであろうと想像しています。また、稀少種・絶滅危惧種・危急種の花も植栽していますので、花を愛する方には大変興味深い庭園でもあると思います。
 この庭園内には湿地帯に生息する花も多く植えられているのですが、池や溝に車いすが落ちないように車止めがしてありました。

 自然をできるだけ残して庭を楽しみたい。土の部分を多く残して、実際に車いすで通過し易い状態(インターロッキング舗装など)にして庭を楽しみたいという相反する環境をつくりあげるのは大変難しいことだと思います。

 この「山野草園」は、和風のテイストを香らせながらインターロッキングブロックを使用し車いす利用者にも優しいバリアフリー庭園となっています。約百五十平米のなかに和風と洋風がマッチしてそれぞれにバランスよくまとまったバリアフリー庭園であると感心したしだいです。

 平成15年 12月 上旬現在

 

平成15年度「四季を彩る庭」  / 平成16年度「流れのある庭」 / 平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」

平成18年度「和楽(からく)の庭」 / 平成19年度「見本庭園のバリアフリー化」 / 平成20年度「干拓地の生き物を知る

平成21年度「万葉の小径(まんようのこみち)」 / 平成22年度「まくあいのこかげ」 / 平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化

平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」 / 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」 / 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」 

平成27年度「鳥達の集う滝」「クジラの庭のスロープ」

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