町角のバリアフリーの意識

26) 興陽高校のバリアフリー庭園  Part V

「見本庭園のバリアフリー化」 

平成20年 1月 22日 撮影 

A、お茶会(立礼席にて)と石張り(車いす対応) B、お茶会(立礼席)と竹組のテーブルといす

造園デザイン科三年生 19名(平成19年度)

 概要と感想 

 平成15年度の「四季を彩る庭」から、ここのバリアフリー庭園の授業に参加してきて、平成16年度の「流れのある庭」、平成17年度のバリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」、平成18年度の「和楽(からく)の庭」とここを訪れる度に、日本庭園がバリアフリーとは無縁のものとして孤立しているように感じておりました。

 昨年度の授業の終了後、先生から来年度は「和楽(からく)の庭」から見本庭園に入れるようにしたいと考えていますとお聞きした時に、どのようなかたちでバリアフリー化されるのか楽しみにしておりました。

 興陽高校の敷地内にある日本家屋と日本庭園は他の場所から移築されたもので、日本庭園は興陽高校の「見本庭園」として存在しているようです。今年度は、その見本庭園のバリアフリー化とその庭園のなかでお茶を飲むことがテーマであると設計責任担当者の富永君が答えてくれました。

 左上写真Aは、車いす利用者の私のためにテーブルを作成してくれまして、立礼席にてのお茶会の様子です。私の真向かいに澁谷先生、その隣に生徒さん達が竹製のいすに座っております。テーブルは礼拝石(らいはいせき)の上に固定してありましたが、お茶会などがない場合は備え付けてありません。
 礼拝石(らいはいせき)というのは、庭園内に配置された平石で、そこで礼拝したり、そこから庭全体を見渡すと眺めが良いとされています。礼拝石の側まで車いすで行けるようになっていましたので嬉しい限りです。

 右上写真Bで、池とその向こうに大きな石が見えます。いくつかの石で「石組」をしておりますが、「石組」は古くは飛鳥時代より日本庭園の美のひとつとして考えられております。四季を彩る樹木とともに重要な構成要素として「石組」があるわけです。その「石組」を礼拝石の辺りから眺望できるようにと、バリアフリー化してくれましたことに感謝したい。

 既存の日本庭園の景観を崩すことなく庭園内すべてをバリアフリー化することは困難でありますが、一人で車いすを走らせて礼拝石の側まで行けるようになりましたので、「和楽の庭」から竹垣越しだけでなく、よりこの日本庭園の景観を楽しむことが出来るようになりました\(^o^)/

 お茶会の前日に雪が降りまして、屋根や木々の上に雪が残っておりました。そういった庭園のなかで風情を楽しみながらお点前をいただけることは、車いす利用者の私にとって夢のようなことでありなんと幸せなことかと感じたしだいです。緊張のなかに温かい抹茶が心地よく心と身体を包んでくれたように思います。感謝。

 左下写真Cは、お茶会前の準備を指導している片山先生(造園技術の担当教諭)であります。中央下写真Dは、茶道部顧問の着物姿の宇野先生でありますが、火鉢に炭を入れているところであります。何とも趣がある光景ではありませんか。事前に宇野先生から作法の説明があり、中央下写真Eのように縁側にて生徒さん達がお点前を頂戴しているところです。

 生徒さん達には良い体験になったと思います。右下写真Fは、授業の終わりにて、本日お世話になった宇野先生、大野先生そしてお手伝いをしてくれた茶道部の生徒さん達にお礼を言って授業を締めくくっているところです。

 宇野先生、大野先生そして茶道部の生徒さん、有難うございました。ご馳走様でした。感謝。

C、片山先生 D、宇野先生 E、縁側でのお茶会 F、挨拶

写真ABEFGHIJ 提供 大山桂吾先生

写真CD     提供 澁谷俊彦教授

 車いすで見本庭園内に入ることができるようになりましたので、どうぞ皆さんもぜひ他のバリアフリー庭園とともに散策してみてください。(但し、散策する前に、興陽高校にご連絡ください。)

 これまでのバリアフリー庭園や今年度の見本庭園のバリアフリー化の授業の内容が認められ、平成19年度バリアフリー化推進功労者表彰で「内閣府特命担当大臣表彰優良賞」を受賞されました。高校として表彰されたのは初めてということです。下記の受賞者一覧を見ましても、大変素晴らしい賞を頂いたものだと感じるしだいです。本当におめでとうございました。

岡山県立興陽高等学校
  住 所 : 岡山県岡山市藤田1500
  電 話 : 086-296-2268(代表)
  URL  : http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/

 「造園デザイン科 三年生 庭園施工管理類型 19名
 (造園デザイン科 科長 大山桂吾先生、藤本泰史先生、片山大助先生、田中賢造先生、太田貴久先生

 茶道部顧問 宇野恵美子先生
 茶道部顧問 大野里江子先生

 内閣府特命担当大臣表彰優良賞受賞(平成19年度バリアフリー化推進功労者表彰) 受賞者一覧

山陽学園短期大学
  住 所 : 岡山市平井1−14−1
  電 話 : 086-272-6254(代表)
  FAX  : 086-273-3226
  URL  : http://www.sguc.ac.jp/

 「キャリアデザイン学科」(澁谷俊彦教授 倉敷市伝統的建造物群等保存審議会委員)

 

平成20年 1月 22日 撮影 

G、腰高麗袖垣 H、立礼席のテーブルといす I、露地門の周辺 J、礼拝石とテーブル

 設計責任代表者 (富永雅己)
 プランのテーマ:「見本庭園のバリアフリー化」と「澁谷先生、森本先生とお茶を飲もう」
 プランの考え方:「和楽の庭」から「見本庭園」に入って、高齢者や障がい者が庭全体をまわることは難しいので、見本庭園全体を見渡せるよう
           にすることを考えた。
           (「和楽の庭」から低い建仁寺垣越しに、又礼拝石の側まで車いすで入れるようにし、庭全体が見渡せるようにすることを
           考えた)
 石張りについて:日本庭園という既存の景観を壊さないようにするため、インターロッキングブロックではなく自然石(丹波石)を張っていった。
 スペースと目地幅について:既存の門の幅は変えられないので、入ったところに広めの場所をとり、車いす利用者が行き来し易い様に考えた。 
                  他の場所も車いすが通行及び方向転換できるように考えた。
                  目地幅は、山目地にして車いすの前輪がはまり込まないように1cm程度に考えた。

 施工責任代表者 (倉田忠宗)
 今年度は興陽学校の90周年であり、そのモニュメントの作成があったので、バリアフリー庭園の作庭にとりかかるのが遅かった。(9月下旬頃から作庭) 少ない作業時間のなかで中身の濃い建仁寺垣、腰高麗袖垣、露地門、石張り、立礼席のためのテーブルといすなどを作ることができたと思う。

 施工で難しかった点は、石の大きさや形がバラバラなので、四つ目地や通り目地ができないように石を配置し、段差ができないように平らに張ること。何度も何度も手直しをした。また、山目地にし、車いすでスムーズに通れ、視覚障がい者の方にも場所が特定できるような目地にすることが難しかった。

 建仁寺垣では、立子(たてこ)のすき間ができないようにまっすぐにするところが難しかった。立礼席のテーブルは、竹で作っているが、竹に穴をあけてそれにちょうど良い竹を入れるのが難しかった。

 作業時間の内容は、男女とも同じぐらいで皆が1つのものに協力して作ることができた。

 概要と感想 

 予め設計責任代表者の富永雅己君と施工責任代表者の倉田忠宗君に質問形式に答えて頂きレポートを書いてもらいました。上記はそれを簡単にまとめたものであります。プランの段階で見本庭園のバリアフリー化とともに、お茶を一緒に飲みたいということをテーマにしてくれて、車いす利用者の私は生徒さん達の優しさを感じてしまう。

 左上写真Gは、完成した「腰高麗袖垣」とテーブルであります。中央上写真Hは、屋根や木々などの上に雪が残っている様子です。中央上写真Iは、露地門周辺の石張りで、車いすが回転できるスペースがあります。また、石張りと土の境には「玉竜」という草を植えているのですが、視覚障害がある方にも白杖で境目が分かりやすいように植栽したそうです。

 今年度は、見本庭園のなかに車いすで入れるだけでなく、立礼席でお茶を頂くという動作が加わっております。そのために右上写真Jのように、竹を組み合わせたテーブルといすを作成してくれました。

 見本庭園のバリアフリー化で、私自身勉強になったり嬉しく思ったのは、山目地のような伝統的な技法がバリアフリー化するために使われていることであります。バリアフリーとかユニバーサル・デザインと聞くと、新しい素材や手法などを思いがちでありますが、伝統的な技法によってバリアフリーにすることが出来ることを知りました。

 遮蔽を目的とした建仁寺垣を低くして車いす利用者の視点に合わせ眺望ができるようにしたり、山目地の技法が良い例で、伝統的な技法を少し視点を変えるだけでバリアフリーと大いに関連付けられるわけです。
 
 先生方のご指導が良いのでしょうが、今年度の生徒さん達はなんとも玄人はだしの造作をされたものだと感心する。出来上がってみると本当に素晴らしく素敵なものに思えるわけだが、その裏に大変な地道な作業の積み重ねがあったと想像しております。感謝。

平成20年 1月 9日 撮影 

K、竹垣(建仁寺垣) L、竹割り器 M、目地ゴテ N、竹穂揃え

 概要と感想

 今年度は左上写真Kで分かりますように、素晴らしい「建仁寺垣」が出来上がっておりましたが、あまりの仕上がりの美しさに「竹」について興味がわいてきましたので、田中先生に造作の仕方をお聞きしました。まず竹の伐採の時期は、国産では3年目以降の9月〜12月までぐらいに切り取った竹が繊維が引締まって最も優れているらしい。ここでは、3〜5年の竹を使用しているとのこと。2年目までの竹や梅雨の時期に切った竹は繊維のなかの水分が抜け切らないので虫が入りやすくなるようです。ここの建仁寺垣や腰高麗袖垣は、大変品質の良い材料「竹」が使用されているようです。

 中央上写真Lは、竹割り器で大小2種類ありましたが、この写真は大のほうの竹割り器です。立子(縦に並んだ竹)をつくるために使用します。竹垣の上の長い竹は「玉縁(たまぶち)」で上に乗せて景観をよくするためのものです。中間の長い竹は押縁です。押縁(おしぶち)には径7センチ程度の竹を使っていますが、二つ割り(半割り)にした長さ7m程度のものを柱から柱に渡し立子を固定しています。 玉縁も半割りにしますが、押縁より少し大き目の竹を半割りします。長さ7mほどの竹を均等に半分に割っていくのはコツがいるのですが、さすがに造園デザイン科の生徒さんは道具の扱い方の覚えが早いと田中先生が褒めておられました。

 中央上写真Mは、目地ゴテであります。数種類あるのですが、ここでは分かり易いように3種類のコテを撮影しました。山目地を作る時に使用します。左官屋さんが使用する目地ゴテとは別に、造園用の目地ゴテがあるのを知りました。これなら細かい仕上げが出来そうですね。

 右上写真Nは、竹穂の揃え方を教えてもらっているところです。節の長さやしなりの方向を揃えて、左上写真Gのような「腰高麗袖垣」をつくるために造作し易いようにするわけです。

取材協力 手モデル 田中賢造先生 

 

平成19年 12月 4日 撮影 

O、露地門と建仁寺垣 P、山目地 Q、腰高麗袖垣の下地 R、三者会談

 概要と感想

 左上写真Oで分るように、露地門を入ったところから礼拝石までの通路に丹波石が敷き詰められ石畳と分かるぐらいになっておりました。後は中央上写真Pで分かるように、幅広い目地に車椅子の前輪がはまり込まないように、山目地(幅広い目地の真ん中に山を作り車いすの前輪が目地にはまり込んで動きが取れなくなるのを防ぐ)にする作業をしているところです。中央上写真Pで分かりますように、細かい手作業のため生徒さんが足を組んで丁寧に仕上げをしているところです。露地門の屋根は杉皮を何重にもして葺き替えているようです。

 中央上写真Qは、腰高麗袖垣の下地ですが、これを覆う仕上げのための竹を揃える作業(右上写真N)も、見た目以上に忍耐力のいる地道な作業であると感じました。

 右上写真Rは、礼拝石辺りで、左から澁谷教授、田中先生そして大山先生であります。今後の見本庭園のバリアフリー化の予定や経過について話をされているものと思われます。

 

平成19年 10月 30日 撮影 

S、垣根と露地門 T、露地門周辺 U、露地門の入口付近 V、礼拝石(らいはいせき)周辺

 概要と感想

 本日、訪れる前にブロック塀をどのようにするのだろうかと考えておりました。(バリアフリー展望台「友集の丘)他で分かるように透かして向こう側が見えるような四つ目垣にするのか、部分的に向こう側を見せないような建仁寺垣(遮蔽垣)にするのだろうかと勝手に想像しておりました。それが左上写真Sのように、車いす利用者の視点からでも観えるように低目の建仁寺垣ができておりました。
 そして、中央上写真Tで分かるように、りっぱな露地門までできているではありませんか。和楽の庭から日本庭園を拝見しても違和感なく眺望を楽しむことができるようになっておりました。

 中央上写真Uは、正門(北側)から露地門の周辺を撮影したものです。右上写真Vは、礼拝石の周辺をを撮影したものです。和楽の庭からの露地門周辺、そして礼拝石(らいはいせき)の前に、丹波石の平らな形のものを敷き詰めて行っている途中でありました。(礼拝石:庭園内に配置された平石で、そこで礼拝したり、そこから庭全体を見渡すと眺めが良いとされています。)

 

平成19年 2月 3日 撮影 

W、和楽の庭から撮影 X、西門とブロック塀 Y、西門入口周辺 Z、池庭

 概要と感想

 平成19年度のバリアフリー庭園の場所は、左上写真Wの「和楽(からく)の庭」から隣の見本庭園(日本庭園)へのアプローチを考えることであります。中央上写真Xで「和楽の庭」のパーゴラの下から門とブロック塀が見えておりますが、屋根は青いビニールシートがかかっておりました。中央上写真Yは、西門と入口周辺を拡大したものですが、施工前の「」が見えております。

 右上写真Zでは、手前の空きスペースが「土」になっていますが、ここを石張りにして車いすがここまで入って来られるようにしたいということです。このスペースの隣に礼拝石(らいはいせき)があります。 

完成 平成20年 1月 下旬 現在

 

平成15年度「四季を彩る庭」  / 平成16年度「流れのある庭」 / 平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」

平成18年度「和楽(からく)の庭」 / 平成19年度「見本庭園のバリアフリー化」 / 平成20年度「干拓地の生き物を知る

平成21年度「万葉の小径(まんようのこみち)」 / 平成22年度「まくあいのこかげ」 / 平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化

平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」 / 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」 / 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」 

平成27年度「鳥達の集う滝」「クジラの庭のスロープ」

日本における住環境の現状 / 福祉住環境コーディネーター / 住環境の整備について

介護保険制度と住生活との関係 / 町角のバリアフリーの意識 / 住環境についての質問コーナー