町角のバリアフリーの意識

20) 興陽高校のバリアフリー庭園 PartV

バリアフリー展望台「友集の丘」

平成18年 2月 3日 撮影 

A、「四季を彩る庭」から撮影 B、全景P1

設計(CAD担当)代表者:曽我麻理子 / 施工代表者:遠藤淳
           他 造園デザイン科三年生 17名(平成17年度)

概要と感想 

 平成15年度のバリアフリー庭園「四季を彩る庭」、平成16年度の「流れのある庭」につづいて今回(平成17年度)のバリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」と私にとっては三つ目の庭園ということになります。

 昨年と同様に山陽学園短期大学「キャリアデザイン学科」の澁谷俊彦教授とともに見学させていただきました。今回のバリアフリー展望台「友集の丘」は、ここでのバリアフリー庭園の実習授業としては5つ目となります。最終的にはこの5つのバリアフリー庭園は、通路などを整備して容易に行き来できるようにし、一つの庭園として楽しんでもらいたいということです。

 17年度(H18年1月末完成)は下写真O・Pで見るように、H17年6月からと早い時期からこの庭園を見守ることとなりました。

 17年度はこの場所に「お子さんや車いす利用者の方が大人の目線で他のバリアフリー庭園を観れるように展望台を作ろうと思っています。」と中野先生からお話をうかがって、内心嬉しいことと思いながら果たして限られた授業のなかだけで、大掛かりになるであろうと想像される展望台を完成させることができるのだろうかと半信半疑でありました。

 平成17年11月10日に再度訪問した時には、下写真Kで分るように高さ約1.2mまで石積みが出来上がっておりましたので、本当に出来上がるかもしれないと胸がワクワクしてきました。いつも平面的に眺めている庭園が立体的な景観へと、展望台によって車いす利用者にも眺望に変化が期待できると思えてきました。

 平成18年1月26日に見学に行った際には大変素晴らしいバリアフリー展望台がほぼできあがっており、施工中の様子を見ていただけに大変感動してしまいました。

 石積みらせん状になっており、車いすでたやすく上がることができるようにインターロッキング舗装のスロープになっていました。デザイン性と実用性を兼ねそろえた展望台とは、なんと素晴らしいものをつくったものかと感激し目頭が熱くなってきました。生徒さんのなかには出来上がった展望台の上で涙を流した人もいたということです。苦労が喜びにかわり、嬉涙を流すほど思い入れのある展望台とは本当に素晴らしい。一生忘れることのない思い出となることでしょう。

 平成18年2月に上写真A・Bのように展望台が出来上がっておりました。らせん状になったスロープに沿って積み上げられたなめらかな石垣のラインに魅了されるのは私だけでしょうか。
 
 展望台の上に植えられた桜の木が咲く頃は、また格段と庭園全体が映えるのではないかと今から待ち遠しく思っているところです。

 高さ2.5mのバリアフリー展望台が庭園のなかにあり見晴らしがいいわけですが、高さがありますので利用の仕方を間違うと事故につながるやもしれません。我々利用者側がより良いマナーで安全な利用の仕方をすれば、ここを訪れる高齢者、障がいを持っている方、子供さんそして健常者の方々、皆さんに楽しんでもらえる展望台と庭園だと思っております。
 どうぞ皆さんもぜひ庭園内を散歩してみてください。

岡山県立興陽高等学校
  住 所 : 岡山県岡山市藤田1500
  電 話 : 086-296-2268(代表)
  URL  : http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/

 「造園デザイン科 三年生 庭園施工管理類型 17名
 (造園デザイン科長 中野功先生、田中賢造先生、尾畑篤司先生、日下弘明先生、藤井泰彰先生

山陽学園短期大学
  住 所 : 岡山市平井1−14−1
  電 話 : 086-272-6254(代表)
  FAX  : 086-273-3226
  URL  : http://www.sguc.ac.jp/

 「キャリアデザイン学科」(澁谷俊彦教授 倉敷市伝統的建造物群等保存審議会委員)

 

平成18年 2月 3日 撮影 

C、全景P2 D、測定 E、眺望 F、展望台スペース

 概観と感想 

 1月26日に拝見した後、展望台のスロープの勾配とフラットのスペースについて気になっていましたので庭園を訪問してみました。三年生は卒業式まで既に休みに入っていたようでしたが、別の用事で学校に来ていた施工代表者の遠藤淳君は、私の姿が見えたので庭園をのぞいてみたとのこと。

 遠藤君に手伝ってもらい、中野先生と一緒にスロープの長さと勾配を再度測ってみました。中央上写真Dの少し手前から展望台まで34m、途中17m地点から18.7m地点までフラットになっていました。スロープの勾配はおおかた1/15以下、一部1/12以下のところがありました。1月26日に測定した時よりも、全体的に勾配がゆるやかに整備されフラットなスペースが設けられていました。これで、17年度の生徒さん達の当初のプラン通りのスロープが出来上がったのではないかと思っております。

 左上写真Cは展望台の全景でありますが、石垣のなめらかな勾配のラインは芸術的に感じてしまう。魅せられて見入っておりました。

 中央上写真Eは、スロープの途中から「四季を彩る庭」を撮影したものです。飛騨高山の展望台から合掌造りを見渡した時のことを思い出しました。規模は違いますが、自分(車いす)で上がることができる分気持ちはあの時以上に嬉しかったかもしれない。

 右上写真Fは展望台の頂上にある広場であります。他のバリアフリー庭園を観ながら、桜の木の下で花見なんて、春が待ち遠しい限りです。

平成18年 1月 26日 撮影 

G、入り口 H、「カッター」クラック I、あわせ J、コンバクター

 概要と感想

 最後の仕上げの前に、私自身車いすで展望台の頂上まで上がってみました。その時にスロープの勾配(岡山地方振興局の方が考案された「スロープ勾配測定定規」を使用)を生徒さんに確認してもらった。

 高さ2.5mの展望台まで有効幅員1.6m、約34mの道のりであります。インターロッキングブロックのスロープになっているので、腕力の弱い私でも車いすを走らせやすく感じた。この日の測定では、スロープの勾配は入口付近1/15以下、途中平坦に近い1/15以下、部分的に1/12〜1/10以下となっておりました。当初のプランではスロープの途中にフラット(平坦)なスペースを設ける予定だっただけに、少し残念な思いがしました。

 インターロッキングブロックのスロープには長さ220mm×幅110mm×厚さ60mmのブロックを組み合わせて行くわけですが、隙間が空かないように組み合わせて行くと、勾配がついた部分とフラットな部分とでは隙間が大きく空いたり段差がつくことが想像できます。この角度の違う部分のおさまりをよくするのは難しかったらしい。

 左上写真Gは、第3の「四季を彩る庭」から第5のバリアフリー展望台「友集の丘」への通路のつながりの写真で、通路で生徒さんにアドバイスしている田中先生(左)と澁谷教授(右)であります。

 中央上写真Hの「カッター」クラックでブロックを切断し、中央上写真Iでは組み合わせてハンマーで入れていっておりました。コンバクターは衝撃を与えて土を締め固める機械ですが、右上写真Jではインターロッキングブロックの上から締め固めているところです。

 右上写真Jで分るように、車いす及びベビーカーの前輪止めのため、そして転落防止のために竹垣が組んでありました。

※設計(CAD担当)代表者の曽我麻理子さんと施工代表者の遠藤淳君(造園デザイン科三年生)に今回のバリアフリー展望台「友集の丘」についてお話をうかがった。

○設計(CAD担当)代表者の話
 設計(CAD担当)代表者の曽我麻理子さんに、バリアフリー展望台「友集の丘」を作ろうとした動機を聞いてみると、背の低い子供さんや車いすを利用している方々にも、大人の目線の高さで庭園を見せてあげたかった。「見たことがない世界を見せてあげたかった」という返事がかえってきた。なんと心に響く言葉だろうか。私は一瞬言葉につまり目頭があつくなってしまった。

 子供や車いす利用者の視角の世界観に配慮して展望台をつくろうと考えたとは、嬉しすぎて入力している今もまたまた目頭が熱くなってくるではないですか。

 車いすに乗っていて、立位姿勢(立っている)の人と話をする時に、たいてい見上げて話をする場合が多いですし、同じものや風景を見る時に目線の高さが違うので見え方はおのずと違ってきます。写真撮影にしても、高い位置からのアングルは望めない。

 日常生活において、健常者の方が気にもしないことに車いす利用者はバリアを感じることが沢山あります。

 普段そのようなことは仕方のないことだと諦めてしまうのですが、そういったことに配慮されていたりすると本当に感謝したり喜んだりするものなのです。「子供さんや車いす利用者の視角の世界観」を気にするような生徒さん達とは、なんと素晴らしいバリアフリーの感性を持っているではないかと感心してしまう。

 また、そのような感性を育てているこの学校の教育の内容は大変素晴らしいものだと頭が下がる思いであります。

 設計としては高さ2.5mの展望台の頂上まで、有効幅員1.6mの道幅でらせん状で上がって行き(途中フラットなスペースを設ける)、頂上に桜の木そして展望台の周りに植栽をするプランをCADで図面を描いたとのことである。

○施工代表者の話
 施工代表者の遠藤淳君に、バリアフリー展望台「友集の丘」の作庭において施工過程で苦労した点などを聞いてみた。

 土の量が11トン車(約8立米)で16台分、石の量は約26トンということで、ネコ車で土や石を運ぶだけでも大変な労力と時間を要した。

 石をただ運ぶということだけではなく、自然石があいてなので石積みをする時にうまく合う形の石を選ぶのに時間がかかってしまった。高さ2.5mの展望台の頂上まで通路をすべてインターロッキングにする計画のなかで、スロープの勾配をゆるやかにし途中フラット(平ら)な部分をつくるために、勾配のついている部分とフラット部分の継ぎ目のおさまりが難しかった。

 これだけ大掛かりの展望台をつくるには大変な労力が必要だったと思うのですが、施工過程において土や石運びなどの単調な作業に飽きてさぼる生徒さんはいませんでしたか、と少し意地悪な質問をぶつけてみた。「作業の担当を決めてやっていたので、作業の遅れはそれぞれの自己責任でやっていました。」という返事がかえってきた。
 生徒さん達の責任感と団結力の強さを感じさせる言葉であった。

 もうすぐ卒業しますが、できていないところがあったら一人でも来て作業をしたいと、展望台に対しての思いを熱く語っていた。

 

平成17年 11月 10日 撮影 

K、石垣P1 L、石垣P2 M、運搬中

 概要と感想

 左上写真Kは、石垣の石をどのように組み合わせようかと思案している生徒さん達です。写真の右側にスロープができていたので車いすを走らせてみました。
まだ、土を固めたままでしたので、車いすでは上りにくく下る時もゆっくり操作しないとタイヤが滑ってしまいました。

 中央上写真Lのように石が大きいですので、一つ一つ運んでいるんですね。大変な労力を要するようです。ほんとにここの生徒さん達は頑張りやが多いようです。お城の石垣などを想像すると気が遠くなりそうですが、ここの石垣が出来上がった時にはさぞ感動することでしょう。

 右上写真Mは、女子生徒も男子生徒に負けず作業しているのであります。男子も女子も各々の作業の内容を心得ているようです。

 

平成16年 12月 7日及び平成17年 6月 13日 撮影 

N、作庭前(12/7) O、やり方と高さ(6/13) P、やり方と幅(6/13)

 概要と感想

 左上写真Nは、平成16年12月7日に第3の「四季を彩る庭」から第5のバリアフリー展望台「友集の丘」の作庭前の様子を撮影したものです。木々の置き場所となっており、まずこれらを移動するところから始めなければなりませんが、これも大変な労力と時間を要したと想像しております。

 平成17年6月13日には、中央上写真Oで見るように、やり方の杭と水ぬきが張られていました。やり方とは基礎の壁の中心線・通り心などを現場に表示するための仮設物であります。

 中央上写真Oでは、展望台の高さがどれくらいになるか確認しているところです。(中央上写真O、中野先生(右側)と澁谷教授(左側)) そして、右上写真Pでは、スロープの幅を確認しているところです。(右上写真P、中野先生(右側)と澁谷教授(左側))

 6月13日に訪問した折に平成17年度の生徒さん達に、実際に車いすに乗って操作してもらいました。

 学校内の幅約3.7mの道の端を走行してもらいました。道をつくる場合、雨が降った場合の時のことを考えて「かまぼこ状」にしていることが多い。(車いす操作の仕方を参照) 

 道の端を走行すると、くだり坂側に車いすが流れて行ってしまう。また、数ミリ程度の砂利があるとタイヤが滑ってしまい、車いすに乗っている人自身では操作困難におちいることがあります。

 車いす操作の体験した生徒さんが、思わず「こえー!」(岡山弁で怖いの意味)と立ち上がって車いすから離れてしまいました。

 オイオイ、どんなに怖くても車椅子利用者は逃げたくても逃げられないんだよ。というようなことを言ったように記憶しております。

 私も操作困難におちいり、高い場所から転落しそうになったことがあります。自分で止めることができず、ズルズルと進み転落して大怪我ないしは死んでしまうかもしれないという恐怖感は測りしえないものがあります。

 実際に車いすに乗って体験することは、今回のバリアフリー展望台及び作庭時だけでなく、日常生活や社会生活でバリアフリーを考える場合に大いに参考になったと思っています。

 平成18年 2月上旬 現在

 

平成19年 1月 23日 撮影 

A、案内表示 B、案内表示を拡大

 概要と感想 

 岡山県立興陽高等学校は、台湾の国立台中高級農業職業学校と姉妹校提携を締結し学校間国際交流を展開中とのことだ。

 平成17年1月には岡山県立興陽高等学校造園デザイン科生徒・教員が台湾を訪れ、同校地内に日本庭園を施工したことを聞いた時には、国際的な文化交流によって双方に良い刺激をもたらし、相手の文化を認めあったり良い点を取り入れたりできるのではないかと素晴らしいことであると感じたものです。

 今回は、国立台中高級農業職業学校の生徒さん達が来訪したようです。

 そして、平成19年1月に台湾の国立台中高級農業職業学校の生徒さん達が来訪する際に、上写真のA、Bのように「看得更高遠」という看板を作ったとのことです。

 「ここから遠くまで眺められますよ」とか「ここに上がれば見晴らしがいいですよ」そんな意味ではないかと思っております。漢字から想像した訳でありますが、より適した訳をご存知の方はご連絡ください。

平成19年 1月 23日 現在

 

平成15年度「四季を彩る庭」  / 平成16年度「流れのある庭」 / 平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」

平成18年度「和楽(からく)の庭」 / 平成19年度「見本庭園のバリアフリー化」 / 平成20年度「干拓地の生き物を知る

平成21年度「万葉の小径(まんようのこみち)」 / 平成22年度「まくあいのこかげ」 / 平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化

平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」 / 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」 / 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」 

平成27年度「鳥達の集う滝」「クジラの庭のスロープ」

日本における住環境の現状 / 福祉住環境コーディネーター / 住環境の整備について

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